赤ちゃんの歯磨きについて、「いつから歯磨きを始めればいいの?」、「どうやってやるの?」、
「嫌がられて困っている」など、様々な悩みや不安を抱えている方も多いと思います。
“赤ちゃん時代の歯磨きが生涯の口内環境を左右する。”と言っても過言ではありません。
乳歯は生え変わるので虫歯になってもいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。乳歯が虫歯になることで、永久歯も虫歯になりやすくなったり、永久歯の歯並びが悪くなるといった悪影響もあります。
また、赤ちゃんの時の歯磨きは、むし歯予防という目的以外に、今後の歯磨きの習慣を身につけるという意味でとても重要です。
今回は、赤ちゃんの成長に合わせて行っていくべき歯磨きの方法と、定期健診に行くべき時期、歯磨き以外にできる虫歯の予防法などお伝えします。
赤ちゃんの歯磨きには、2つの重要な役割があります。
歯が生えそろうまでの歯磨きで一番の目的は、歯磨き習慣をつけることです。口内へ異物が入ることに慣れることから始まり、小学校に入る頃には自分で歯磨きをできるようにすることが目標です。そのため、嫌がるところを無理矢理やってはいけません。改めて機嫌が良いときに行なったり、まずは口周りに触れるだけなど、拒否反応が起こらない程度にしましょう。歯ブラシでなくてもガーゼや綿棒、指でもいいです。
赤ちゃんは唾液が多く虫歯になりにくいですが、一切虫歯にならないわけではありません。「乳歯が虫歯になっても永久歯に生え変わるし、虫歯になっても大丈夫だろう」と思う方もいるかと思いますが、実は乳歯の虫歯には「永久歯が虫歯になりやすくなる」、「歯並びが悪くなる」、「かむ力やあごの発育が悪くなる」など多くのリスクがあります。大人のように1日3回しっかり磨く必要はないですが、赤ちゃんの成長に合わせて適度にきれいにする必要はあります。詳細は下記よりお伝えしていきます。
赤ちゃん〜子供の成長時期により適した歯磨き方法は変わります。下記のタイミングを目安に歯磨き方法を変えていくことが重要になります。
・乳歯が下に2本生えたら歯磨き開始(6か月~1歳頃)
・前歯が上下4本ずつ生えたら本格的に歯磨き開始(1歳頃)
・奥歯が生えたら歯磨き法を変更(1歳半頃)
・6歳臼歯(奥歯の永久歯)が生えたら要注意(6歳頃)
乳歯が下に2本生えたら歯磨き開始(6か月~1歳頃)この時期の目標は、歯を磨くこと、歯ブラシに慣れることです。まだ虫歯にはなりにくいため、無理に歯磨きをしなくて大丈夫です。
通常、最初に生えてくる乳歯は下の前歯のことが多いです。下の前歯は常に唾液に守られている状態なので虫歯になりにくく、歯ブラシでしっかりみがく必要はありません。そのため、歯磨きという行為に慣れてもらうことがこの時期の目的です。まず、親が座って膝に子どもを寝かせて、顔や口まわりに触れたり、話しかけたり、リラックスしてから、ガーゼなどで歯を拭いてあげましょう。これに慣れてきたら少しずつ歯ブラシを使い始めますが、まずは歯ブラシの感触に慣れることが大切です。嫌がられない程度で、徐々に慣れてもらいましょう。
濡らしたガーゼでもいいですが、市販されている歯磨きシートなどもあります。使いやすい方を選んでください。
口に歯ブラシを入れることに慣れるのを目的なので、ゴム製の歯ブラシが万が一のけがもしにくくおすすめです。のど突き防止プレート付きなど、下記のような安全に使える歯ブラシを使いましょう。上の歯も生えてきたら、虫歯予防も意識します!
家族の唾液から虫歯菌が感染します。スプーンだけでなく、口移しなど唾液がうつる行為を控えなければいけないでしょうか?
歯が生えていない赤ちゃんにはもともと虫歯菌であるミュータンス菌はいませんが、2歳半までに虫歯菌が家族から感染すると、その後虫歯菌は一生、住み続けてしまいます。
残念なことに虫歯菌は定着します。家族の虫歯菌が感染しないように、噛み与えやスプーンなどを一緒に使うことは控えた方が良い時期があります。歯の生えてきた10ヶ月から歯の生えそろう2才までは清潔にいておいた方が良いという話もあります。しかし、赤ちゃんの口には何らかの経路で虫歯菌は入ります。つまり、いくら気をつけてもスキンシップによる感染の可能性を0にすることはできません。だから家族の虫歯菌が赤ちゃんに感染しないように、家族の口腔ケアが大切になります。
1歳半過ぎであれば、キシリトールタブレットやガムを食べさせるのも虫歯予防に効果があります。キシリトールは虫歯の原因となるプラークの働きを抑えます。飲み込んでしまっても問題ないタブレットの方が小さい子には安全です。
注意点として、キシリトールには下剤効果があります。食事後に歯磨きが出来ない時など、補助的な役割として使ってください。
いくつかの商品は、キシリトール配合率が高く、誤飲しても気管をふさがないよう配慮した形をしています。
フッ素塗布をすることで、歯のエナメル質表面を強くし虫歯予防をすることができます。唾液や食事によって徐々に効果が薄れてきますので、3ヶ月~6ヶ月毎に行うと効果的です。当院も含め子どものフッ素塗布を無料で行っているところもあります。その場合、ホームページに記載されていることが多いので、お近くの歯医者をチェックしてみてください。ただし、フッ素塗布をすれば虫歯にならないわけではありません。歯磨き習慣は必ず続けましょう。
前歯が上下4本ずつ生えたら本格的に歯磨き開始(1歳頃)
上の前歯は唾液の届きにくいところなので、下の前歯より歯磨きの必要性が高くなります。上の前歯4本が生える頃には、ガーゼから歯ブラシに変えていきましょう。
歯ブラシを使う際の注意点として、上唇の裏側にある上唇小帯というひだは、強くみがくと痛みを伴うことから、子どもが「歯みがき嫌い」になるきっかけになりやすい部分です。左手の人差し指を横にして隠し、歯ブラシが当たらないようにしましょう。ブラシを歯に当て、軽い力で細かく動かしてみがくと効果的です。
1歳頃の乳児用歯ブラシは通常のと比較してブラシの部分が小さく、毛の長さも短くなっています。乳歯は永久歯に比べ小さく、口内も狭いのでブラシは小さめの方が磨きやすいです。仕上げ磨きがしやすいように持ち手が長いものも使いやすくおすすめです。
赤ちゃんによって、歯と歯の間に隙間のある子とない子がいます。隙間のある子は歯ブラシの毛先を使えば歯の間のよごれは簡単に取れますが、隙間のない子はデンタルフロスを使う習慣もよいです。この時期から徐々に初めて、使うことになれる習慣をつけましょう。普通のものだと大きすぎるので子供用を利用してください。
奥歯が生えたら歯磨き法を変更(1歳半頃〜5才)
この時期の目標は、自分で歯ブラシを口に入れてもらうことです。きちんと磨けていなくても大丈夫です。仕上げ磨きをしてあげましょう。
また、歯科検診デビューはこの時期です。
奥歯の歯磨きは難しいので、歯磨きをしてあげる際は「寝かせみがき」や「立たせ後ろみがき」がおすすめです。まずは、自分で歯磨きのまねができるようにしたうえで、仕上げ磨きをしてあげましょう。
歯磨きをするタイミングの理想は毎食後にすることですが、難しい場合は夕食から就寝まで1回を丁寧に歯みがきしましょう。就寝時が最も虫歯になりすいためです。朝食、昼食後は可能であればという気持ちで大丈夫です。
また、この時期に最初の歯科検診をしましょう。気付きにくい虫歯のチェックだけでなく、その子に合った予防法なども相談できます。
イヤイヤ期とはわかっていても、毎回全力で拒絶されるのがつらいですね。もっとスムーズに歯みがきをしてあげたいです。イヤイヤ期の歯みがきのコツとか極意としは最初の環境づくりが最も大切です。具体的には仕上げみがきをする人、時間、場所をできるだけ毎日一定にするのがいいです。そして、痛くしないように手足と頭をギュっと押さえつけて、短時間でしっかり歯みがきしてあげること。時間をかけてやるとお子さんも苦痛ですし、イヤイヤは増すばかりです。「歯みがきは嫌いだけど、いつもすぐ終わるなあ」と学んでくれれば、だんだんおさまってくるはずです。
時期が来ればは必ず大丈夫になります。
安心して今はしっかりみがいてあげてくださいね。
また、大人が歯みがきをしているところを見せるのも大変効果的です。
子どもが歯ブラシに親しみを持ったり、歯みがきの真似をしてくれるようになります。できれば歯が生え始める赤ちゃんのころから、お口のスキンシップをとっておくことも大切です。
清潔にした手指で口の周りにやさしく触れたり、指で軽く歯ぐきを触ったり、子供に気持ち良さを感じさせてあげることからはじめましょう。
基本的には、食べたらみがくという習慣付けのために毎食後の歯みがきを行ってほしいです。
習慣化です。もちろん毎食後がむずかしい場合は、最低でも1日1回はちゃんとみがいてほしいと思います。夕ごはんを食べた後から寝る前が良いです。
むし歯というのは、甘いものを食べたらその場ですぐ穴が開くわけではなく、数週間から数カ月単位で進行します。唾液にはむし歯になるリスクを減らす作用があるのですが、寝ている間は唾液の分泌が下がるので、夜はむし歯リスクが高くなります。またこの頃はよだれも多いので虫歯の進行は抑えられるはずなのですが、持って生まれた体質によっては唾液の能力が不十分で虫歯を作り安い子もいます。
毎食後きっちり必ずみがけなかったとしても寝る前の1回はしっかりみがくことが大切です。
1日の回数を気にするよりも、1日のうち1回でよいのでしっかりみがくことを心がけたほうがいいです。乳歯のむし歯になりやすいところは、「奥歯のみぞ」「奥歯の間」です。この部分は優先的にみがいてあげてください。前の方はよほどでない限り虫歯には成りにくいです。後ろの8本(上下左右2本)をしっかり磨きましょう。
幼児用歯ブラシ、デンタルフロスともに、1歳頃から使っているものと同じ系統のものを使いましょう。また、歯磨き粉はまだ使う必要はありませんが、いちご味など味付きの歯磨き粉を使うことで、歯磨きをさせてくれる子もいます。その場合は、子供用のジェルタイプの歯磨き粉を使用してください。発泡剤や研磨剤などが入っていないため、飲んでしまっても問題ないように作られています。
いきなり異物が入ってくるのですから、嫌がられて当然くらいの気持ちでいましょう。歯磨きの時間が楽しいものと思ってもらえれば、自然と歯ブラシも受け入れてもらえるはずです。笑顔を心がけましょう。
仕上げみがき!体勢に慣れてもらう
歯磨きの時だけ普段と違う体勢にするのはよくありません。歯磨きの時間以外でも寝かせ磨きの体勢でスキンシップをとって、その体勢でいることを好きになってもらいましょう。おもちゃで遊んだり、ほっぺや口周りに触れて、徐々に歯磨きに移っていくとよいでしょう。
歯磨きを嫌がる子供に歯をみがかせる一番効果的な方法が、楽しい動画を見せて一緒に歯磨きすることです。YouTubeにも上がっており、既に多くのお母さん方がつかっっている歯磨き動画をいくつか紹介します。
いっぱいありますので飽きることはないです。みんな最初は苦戦するんです。
手鏡を持たせ、今、口の中で何が起きているか説明してあげながら磨きます。「ここにバイ菌がいる」「きれいになってる」など、自分で磨きたくなるような会話をしましょう。
歯磨き中や、終わった後は必ず褒めてあげましょう。もし、上手く磨けていなくても仕上げ磨きをしてあげれば大丈夫です。また、歯磨きがしたいと思ってもらうことを心がけましょう。
いろいろな姿勢でできますが、大事なのは奥歯をしっかり見て磨くこと。
最初は安心感も有り安全な寝かせ磨きが良いです。
まず、お子さんをあおむけに寝かせて、ひざの上に頭を乗せ、上からのぞきこむような姿勢で行うとやりやすいです。
そして、片方の手でお子さんの唇をどけて汚れの残りやすい歯と歯ぐきの境目をきちんとみがけるようにして、もう片方の利き手で歯ブラシを持ちます。
特に、上唇の裏側にあるスジ(上唇小帯)に歯ブラシが当たると痛いので、指でガードしながらみがきます。ちなみに、向かい合わせの姿勢は頭が固定しづらいですし、上の奥歯がほとんど見えないので、おすすめしません。
イヤイヤ期でお子さんの体をおさえつけなければいけない時には、他の人に手伝ってもらうか、それができなければ自分の太ももでお子さんの頭を挟んで、お子さんの手足は自分の足で押さえこみ、動かないように固定します。
歯ブラシの持ち方はグーだと、力が強くなりすぎたり、細かく動かなかったりします。「鉛筆持ち」のほうが角度が付けやすく、力のコントロールがしやすいのでおすすめです。
それと、みなさん右利き・左利きかどうかでみがき方にクセがあります。たとえば右利きの人は、右側の犬歯あたりがみがきにくくて、汚れが残りやすいです。
そのため、私は①かむ面、②外側、③内側の順にみがいていく「順番みがき」を推奨しています。
右利きの人なら、まずはお子さんの口の左側に歯ブラシを当てて、外側をU字型にみがきます。次にかむ面を両方みがいて、それから内側をU字型にみがいていきます。
軽く当てるだけではうまく汚れが落ちませんから、歯ブラシの毛を歯の面に垂直に当てた時に、毛先が歯にあたって少し広がるくらいの力が理想です。そうすると毛先が歯と歯ぐきの境目の部分や、歯と歯の間にまで入り込んで汚れをかき出してくれます。
上の前歯が生える1歳頃からスタートした仕上げみがき。小学校低学年までは毎日必ずしてあげましょう。本人みがきが上手になるにつれて回数は減らしてもOKですが、小学生の間は週に1回はチェックしてあげると安心です。
奥歯の溝をしっかり!
歯並びによっては歯ブラシを縦に使う!
6才臼歯の生え始めは虫歯になりやすい時期。
まだ生えたてで段差有り!角度をつけて溝をしっかり。
奥歯の間が一番大事!歯ブラシでは磨けません!
フロスを通して下さいね。
6歳臼歯(奥歯の永久歯)が生えたら要注意(5〜6歳頃)
永久歯が生えてきたら、食事後は必ず歯磨きをするようにしましょう。虫歯のリスクを下げるためにもこまめな歯磨きが重要です。6歳臼歯が生えた当初は、隣の歯と段差があり歯ブラシが届きにくいため、磨き残しが出やすいです。仕上げ確認・仕上げ磨きをしてあげましょう。磨き方のコツとしては、6歳臼歯だけを磨くよう、歯ブラシを斜めに入れて、横から磨くと良いです。
お子さんの口内は狭いため、ヘッドが小さく、毛が短かく、細めで弾力のある歯ブラシが良いです。自分で歯磨きをさせるとすぐ毛が開いてしまいやすいので、月1回は歯ブラシ交換するのが良いのです。キャラクターの歯ブラシは楽しく磨く助けになりますが、まめに交換するので下記のような歯ブラシも使いやすく手ごろなためおすすめです。
今までのものと同じものを使いましょう。
大人用でも、糸を切って使うフロスでも大丈夫です。
奥歯の間は大切です。今虫歯の種を作ると見つけられません。だんだん大きくなって気がつくのは20才半ばから30才ぐらい・・・。咬む面でないので見つかりにくく、神経まで近いのですぐに進行してしまう場合もしばしばです。
歯磨き粉の選び方としては、”フッ素配合のもの”と、先程お伝えしたように”発泡剤や研磨剤などが入っていないもの”にしましょう。
【歯磨き粉の使い方】
1、歯ブラシと同じ長さに歯磨き粉をのせる。
2、歯磨きをする
3、歯磨き後、軽く吐き出し、うがいは1回だけ。
どの方法にも共通することは、歯磨きの時間が楽しくなるように工夫することです。無理して口に歯ブラシを入れるのではなく、歯磨きを含めたその時間を好きになってもらうことが重要です。